クラウド・アトラス by デイヴィッド・ミッチェル

Hello Everyone! 今回は、イギリスの作家、デイヴィッド・ミッチェルの『クラウド・アトラス』をご紹介します!本作は、2004年度のブッカー賞最終候補作にも選ばれた作品で、2012年にはトム・ハンクス主演で映画化もされているようです。映画は見たことないですが。本作を読もうと思ったきっかけは非常に単純なものでした。とある動画を見ていた際に、本作に出てくる、ある一節が紹介されていました。その一節がとても印象的だったので、調べたところ『クラウド・アトラス』という小説からの引用らしい・・・ということがわかり、居ても立っても居られなくなり、読むことに!(笑)その一節については、後ほどご紹介しますのでお楽しみに!

本作は、めちゃくちゃ複雑で分かりにくい小説です。なので、正直、うまく説明できるかどうかが心配・・・。ま、備忘録のためにも残しておきたいので、頑張って書いていこうと思います!

あらすじ
19世紀の南太平洋を船で旅するサンフランシスコ出身の公証人。
第二次大戦前のベルギーで天才作曲家に師事する若き音楽家。
1970年代のアメリカ西海岸で原発の不正を追求する女性ジャーナリスト。
現代ロンドンでインチキ出版社を営む老編集者。
近未来の韓国でウエイトレスとして生きるファブリカント。
遠い未来のハワイで人類絶滅の危機を迎える文明の守り手。
身体のどこかに不思議な彗星のあざを持つ主人公たちが、支配と暴力と抑圧に抗して叫びをあげる。
現代英語圏屈指のストーリーテラーの代表作。ブッカー賞、ネビュラ賞、アーサー・C・クラーク賞最終候補、ついに翻訳刊行!!!

こんな感じです。あらすじだけではあまりピンとこないかもしれないですね。一見、全然関係ないようだけど、実はどこかで繋がりを持つ、6つの物語で構成されている小説です。6つの異なる物語が、一つの小説を作っている、といったほうが良いかな?それだけでも変わってますが、さらに変わっているのが、小説が前半と後半で分かれていまして、前半でそれぞれの6つの物語の途中までが描かれて、後半で、それぞれ途中から最後までが描かれる、となっているんです。

それぞれの物語に数字をつけると、順番としてはこうなります。

(前半)1、2、3、4、5、6、(後半)6、5、4、3、2、1。

なので、前半では6つの物語、それぞれが途中までしか読めないので、なんのことかよくわからないままです。後半で順番に、6つの物語それぞれが結末まで向かっていき、最初に読んだ1つ目の物語の結末は、最後の最後に読むことになります。構成だけでもめちゃくちゃ分かりにくい!なんで、こんな構成にしたのだろう?謎です。とにかく、一つずつ見ていきましょう!(※それぞれの話、結構複雑だったので、所々間違っているところもあるかもしれませんが、すんません)

1 アダム・ユーイングの太平洋航海誌

まず1つ目の物語。時は19世紀半ば。日誌形式です。主人公はアダム・ユーイング。アメリカの公証人らしい。プロフェテス号という船に乗っている。船上で出会ったヘンリー・グースという外科医と仲良くなる。チャタム諸島に一時的に滞在したりします。ニュージーランドの島らしいですね。先住民であるモリオリ族やマオリ族の話も出てきます。船員には粗野で下品な男たちも何人かいますが、アダム・ユーイングは公明正大な良心的な男、という感じです。アメリカに戻る際、インディアンのオートゥア、という黒人がこっそり船に乗っていたことが判明。奴隷身分である黒人が勝手に船に乗ってきた、ということで、本来ならば殺されてもおかしくない状況です。ただ、オートゥアはアダムが信頼できる存在である、ということを説教師のダーノックという人物から聞いていたので、アダムに助けてもらうために船に乗り込んできたんだとか。つまりこれは密航ってことですね。実は、以前にオートゥアがマオリ族から鞭打たれている場面をアダムは見ていたんですが、その時のアダムの目の中に「哀れみ」があったことをオートゥアは覚えていたんです。そういうこともあり、アダムなら助けてくれるんじゃないかって思ったんですね。アダムは戸惑いますが、オートゥアが船員として役立つということを船長に認めさせ、なんとかオートゥアをアメリカまで連れていこうとします。

オートゥアの身の上話などを聞き、なんとかオートゥアを自由の身にしてやりたい、アダムはそう決意します。オートゥアはモリオリ族なのですが、モリオリ族はマオリ族から差別を受けて、奴隷にされている人種だったみたいです。というか、大量虐殺されたんですね。(これは歴史上の事実)さらにマオリ族の上には白人がいますが。マオリ族の生存危機とか、差別されている、というのは聞いたことがあったんですが、モリオリ族のことは今回初めて聞きましたし、虐殺の歴史についても全然知りませんでしたね。なんで知らなかったんだろうか?歴史では習いませんでした・・・。マオリ族は、モリオリ族を襲撃した際に、誰彼構わず殺したそうで、しかも死骸を食べたらしいです。うう・・・食人です。そういう経緯の中にいたオートゥアですから、なんとしてでも逃げたかったんですよね。

アダムの機転もあり、なんとかオートゥアは船員として認められ、航海を共にすることとなりました。よかったです。さて、そんな折、アダムが発病してしまいます。ヘンリー・グース医師に診てもらったところ、寄生虫がいるということが発覚!恐ろしいですね。で、薬を処方してもらうなどして、回復を目指すアダムだったのでした。で、日誌は途中でいきなり終わります。まさか・・・アダムは病に倒れ死んでしまったのか・・・?

翻訳版は上・下で分かれています。上巻をざっと見たときに、6つの物語があることは分かりました。ただ、下巻は上巻を読み終わるまでは確認しなかったので、下巻でまた6つの物語の後半が読める、とは思ってなかったんです。中途半端に終わるのも、きっとなんかの意味があるんだろうな・・・ぐらいに、あえて何も見ないで、何も調べないで読もうと思っていたので、アダム・ユーイングの話が完全にブッツリと切れていることもあまり気にしないでおこう!って。ま、結果的に、下巻で後半が読めるんですけどね。

さて、一旦アダム・ユーイングのことは忘れて次に行きましょう!

2 ゼデルゲムからの手紙

ロバート・フロビシャーという音楽家が主人公。今度は手紙形式です。フロビシャーが、シックススミスという友人(あるいは・・・)に宛てて手紙を送っているようですね。フロビシャーは才能ある音楽家なのだろうけど、経済的には窮乏しており、一発逆転を狙っているんです。ゼデルゲムという城(ベルギーにある)に住む作曲家、エアーズという老人の写譜家になることで、なんとか生計を立てようと企てるフロビシャー。写譜家とは作曲家が思いついた曲を、その人の代わりに楽譜に表していく人物のことだそうです。エアーズはほぼ盲目で足も悪く、自分で楽譜を書くのは厳しい状況にいます。そんな彼の感覚的な表現を頼りに、フロビシャーは楽譜を作っていく、という感じです。エアーズが「ターターター!」みたいに曖昧な表現をするのを、フロビシャーはなんとか楽譜にしていかないといけないので、なかなか大変な仕事ですね。エアーズ氏には、妻のクロメリンク夫人と、娘のエヴァがいます。

さて、この小説、6つの異なる物語による構成ですが、実はかすかなつながりを見せていきます。フロビシャーはある日、城で「アダム・ユーイングの太平洋航海誌」を発見するのです!!!おそらく1849年頃に書かれたものだということも発覚。フロビシャーの手紙の日付は1931年となっていますから、82年の隔たりがありますね。なぜ、この城に「アダム・ユーイングの太平洋航海誌」があったのかは謎ですが、フロビシャーはそれを読むことにします。

さてさて、城には住み込みで居座り続けていたフロビシャー。クロメリンク夫人と愛人関係になります!なんでやねん!とつっこみたくなりますが。すぐ不倫するよね。本当に。嫌んなりますね。エアーズにバレそうになってやばいことにもなるのですが、なんとか切り抜けます。こちらも物語の中途なところで終わります。フロビシャーは果たしてどうなるのか?

3 半減期 – ルイーザ・レイ最初の事件

さて、お次はこんなタイトルですよ。サスペンスっぽい雰囲気になりましたね。1975年のカリフォルニアが舞台です。ルイーザ・レイというジャーナリストが主人公です。彼女の父親は偉大なジャーナリストだったそうで。父親のようなジャーナリストになるために日々奮闘している女性です。彼女は、ある日アパートのエレベーターである老人と一緒になります。しかも停電があり、しばらく二人きりになってしまうという気まずい状況。この老人、ルーファス・シックススミスという科学者でした。シックススミス・・・???おお!フロビシャーの手紙の相手はシックススミスだったな!ということは、このシックススミスは・・・!?イエス。あのシックススミスです!どこからともなく話を始めた二人。

シックススミスにはメーガンという姪がいるようですね。唯一の友人とも言える姪の話をしたり、ルイーザも自分の身の上話なんかをして、なんとか鬱陶しい停電を乗り越えた二人でした。

ルイーザは、おそらく、後から電話で聞いたのだと思われますが、シックススミスは科学者で、シーボード社が開発する原子力発電所の検査官として携わっていたようです。実は、この原発はかなり危険で市民の命を脅かすものかもしれないのに、シーボード社は欺瞞、脅迫、腐敗、に満ち満ちて、シックススミス氏も封じ込められていたようなんです。で、勇気を絞ってジャーナリストであるルイーザに告発したのでしょう。しかし・・・。シーボード社は内情を知っているシックススミスを消すために、暗殺者により、シックススミスは暗殺されてしまうんですね。ホテルに泊まっていた彼を銃で殺すんですが、工作で自殺に見せかけまして、シックススミスさんは自殺ということで報道されてしまいました。ルイーザは彼のことをよく知っているわけではなかったけども、まさか自殺をするような人ではなかったと思い、これは殺人と見て、独自に調査を始めます。シックススミスのホテルの部屋で、フロビシャーからの手紙も見つけ、懐に入れたルイーザでした。

タイトルの『クラウド・アトラス』という言葉も何度かでてきます。フロビシャーが作曲していた曲が『クラウド・アトラス六重奏』っていう名前だったんですって。

まあ、いろいろありながらも、ルイーザは調査を続けるのですが、シックススミスを殺したビル・スモークという男に目をつけられてしまいました。車で橋を渡っていたルイーザに、ビル・スモークは自分の車でぶつかっていき、ルイーザの車は橋から海に落下・・・。果たしてルイーザの運命は・・・!?

4 ティモシー・キャヴェンディッシュのおぞましき試練

さあ、どんどん物語は変わっていきますよ。ついてきていますか!!!???

現代のロンドンが舞台のようです。ティモシー(65歳)は自営業の出版者というか編集者です。彼が担当していた作家にダーモット・ホギンズというのがいました。彼の新作『顔面パンチ』をフェリックス・フィンチという批評家が酷評したことがきっかけで、ダーモットはフェリックスを投げ飛ばして殺害してしまいます・・・。あまりにも唐突に起こった殺人にちょっと理解が及びませんでした。みんな見てるところで、12階のバルコニーから男を投げたんですよ・・・。当然フェリックス氏は即死です・・・。ホギンズも投獄されます。いやいや・・・。自分の作品を酷評されて恨んで、殺人して15年の刑ですよ。15年刑務所にいるぐらいなら、酷評ぐらいもっとなんとか対処できたでしょう。

しかし、ティモシーはニヤリです。殺人鬼の書いた作品ということで、ほっといても売れます・・・!印税!印税の海!印税がなだれ込んでくる!

と思ったのも束の間、残念ながら、ダーモットにはやばい兄弟たちがいたんですね。彼らの脅しにあい、印税の夢は儚く消えそうになったティモシー。さて、ティモシーの運命はどうなってしまうのでしょうか?しかも、ティモシーは兄から疎まれて、老人ホームに入れられてしまうという、奇想天外な展開!しかもこの老人ホーム・・・なんかおかしい!監督が行き届きすぎていて、もはや監視レベル。外との繋がりは一切絶たれ、電話などもできない。もはや精神病院みたいです。ティモシーは脳卒中のようなものを起こしてしまい、物語は一旦中断します。

5 ソンミ〜451のオリゾン

さてさて、次はなんと・・・SFです!一気に近未来にまで飛びます!これは、対話形式になっています。記録官と呼ばれる人物がソンミ〜451という存在に色々な質問をしているのです。ソンミ〜451の身に起きたことを、彼女自身が記録官に語っていく、というものです。

最初、舞台はどこかなー?と思ってたんですが、どうやら近未来の韓国のようです。パパ・ソン・コープという企業?が所有するレストランがでてきます。そこでは、ファブリカントと呼ばれるクローン人間がサーバー(給仕)として働いています。なんでもこのクローン人間たちは12年間の労働の後、ハワイの天国(「歓喜」)へ行けることになっているんだそう。人間のように自由意志があるわけでもないから、12年の労働もおそらく苦ではない、そう思われています。ソンミ〜451というのもファブリカントのサーバーの一人です。ちなみに女性ですね。ピュアブラッドという言葉も出てくるのですが、これはおそらく人間のことでしょう。

で、ユーナというファブリカントがいたのですが、彼女は次元上昇しているらしく、つまり、人間のような自由意志を持ち始めているらしく、この奴隷のような生活からの逃亡を図ります。ユーナはソンミを仲間に招き、レストランを支配しているリー監督の寝ているすきに鍵を盗んで、秘密の部屋へソンミを案内します。そこには宝物やアクセサリーなど、ソンミが見たこともないようなものがたくさん置いてありました。本来、クローン人間が意思を持ち、自由に話したりすることはないとされているのですが、どうやってユーナは意思を持つようになったのでしょう。まあ、とにかくも、ユーナはここからの脱出を考えていて、ソンミに外の世界を見せることでソンミにも協力してほしい、と思ったんでしょうね。

あ、そうそう、今まで書いてなかったんですが、それぞれの物語の主人公たちの身体のどこかに「彗星形の痣」があるんですよね。ソンミにもあるんです。これが意味することとは、彼らは全て生まれ変わりなんじゃないか?ってことです。時系列で行くと、ティモシーの生まれ変わりがソンミってことになります。輪廻の世界ですね。ま、そんだけのことです。

この話、SFってのもあって、かなり入り組んでおり、なんだかよくわからなくなっていきます。結局、自由意志を持ってしまったユーナは処刑されます。その後、ソンミもこの状況はおかしいと気づいていくんですね。で、彼女はよく分からないままに別の世界へ連れ去られてしまいます。とある大学の寮に住む、ブーム=スーク・キムという大学院生の元に、彼の“検体”としてソンミは連れてこられたようですよ。

私、この話を読み進めていく中で、非常にジョージ・オーウェルやオルダス・ハクスリーっぽいなーって思ってたんです。オーウェルは『1984年』、ハクスリーは『すばらしい新世界』が有名な、SFディストピア小説の二大作家ですよね。で、そう思ってたら、やっぱりな。本文中にもオーウェルとハクスリーの名前が出てきました!もはや・・・パクリと言ってしまってもいいぐらいに似ていますからね、世界観が。

その後、ソンミはブーム=スークと彼の友人たちに遊び半分で怪我をさせられてしまいます。そこにメフィ評議員という人物が現れ、ソンミは救われます。メフィさんは良心的な人物(教授)のようで、ソンミを優秀なクローンとして大学生として登録してやり、この大学で学ぶことを許可したのでした。また、ヘイ=ジューという別の男性と行動を共にするようになるなど、ソンミは一見、普通の人生を歩んでいきます。この物語の中で、ソンミは「ティモシー・キャヴェンディッシュのおぞましき試練」という映画を見ることになります・・・!

超簡潔にまとめると、SFの世界、奴隷のクローンたち、覚醒したクローンであるソンミ、近未来の韓国が舞台ってとこでしょうか。こちらも難解でした!

6 スルーシャの渡しとそん後すべて

さて、最後の物語です。語り手ザッカリーという人物が、自分が9歳の頃の話を回想しています。舞台はハワイ。ソンミの時代からさらに先の超近未来のようです。ソンミのようなクローンがいるという点で、ソンミの話が近未来っていうのはすんなり入ってきたんですけど・・・。ザッカリーの話では、全然近未来っぽくないんです。むしろその反対で、原始時代のような感じなんです。ザッカリーの話し方が、題名でもわかると思いますが、文法がおかしいし、言葉も崩壊している感じで。田舎っぺっぽい話し方っていうか・・・。とにかく、これがそもそも原始時代や未開の地をイメージしているのなら理解できるんですが、超近未来なんですよ!
で、なんで超近未来なのに原始時代のようになっているのかっていうと、「シューエン」っていう出来事が起こった後に、世界の文明は崩壊したらしいんですね。で、ザッカリーのいる場所、そこに住む人々は文明から切り離されたらしくて・・・。「シューエン」は世界の終末のことを指していると思われます。うん、説明が難しいけど。ま、とにかく時代が進みすぎて、逆に原始時代になっているという感じでした

で!ザッカリーには兄のアダム、そしてパパがいたのですが、ある日、パパはコナ人という野蛮人に殺されてしまい、アダムは拉致されてしまうんです!コナ人は、時々、ザッカリーたちの仲間を襲ってくるらしい。ザッカリーのちょっとしたミスでコナ人たちがやってきてしまい、パパが殺されてしまったから、ザッカリーはすごい罪の意識を持つのですが、自分のミスについては誰にも言えなかったんですね。一生涯の秘密として、背負っていくことになります。

ザッカリーはコナ人から逃げて、なんとか命は助かりました。12歳の時に、ジェイジョという娘との間に赤子ができるという衝撃ですが、赤子はすぐに亡くなってしまいます。そして!この世界では、なんと「ソンミ」と呼ばれる神がいます!ソンミ!!!あのソンミは、この世界では神として崇められる存在に!

さて、ザッカリーたちの元にメロニムと名乗る女性(50歳)がやってきました。彼女は先見人と呼ばれています。先見人、つまり文明人のことかと思われます。船でやってくるんです。ザッカリーたちは、船なんか見たことないし、ぶったまげます!船についてメロニムを質問攻めにしたりしますね。ザッカリーはメロニムを怪しんで色々見張っているんですが、彼女は地図を作っていることに気づきます。なぜ、この女は僕たちの住処の地図なんか作っているんだ・・・?とますます怪しむようになっていきます。

ニソーインチョウと呼ばれる人物も出てきますが、これは酋長的な感じでしょうか?ちょっとわかりませんでした。

ザッカリーは、メロニムがスパイで、いずれは彼らを侵略するつもりなのではないか?と疑い始め、ニソーインチョーに相談しますが、ニソーインチョウにはわかってもらえません。さて、メロニムの真の目的とは!?というところで終わります。


さて!前半の振り返りは終了です!前半の時点でなかなかの密度の高い読書!それぞれの物語は途中で終わってしまっているのに、すでに一冊分の本を読んだような充足感がありました。しかも、全部最後まで読めていないので、早く先を読んでどうなるのか知りたい!という焦燥感にもかられてしまいました。決して短い小説ではないので、読むのは正直ちょっと大変ですが、ミステリー小説のように、先を読みたくなる類の小説であることは間違いないでしょう。

では、後半に入っていきましょう!翻訳版では下巻に移ります。

後半は、6、5、4、3、2、1の順番と言いましたね?なので、「スルーシャ」の物語はそのまま順番に読める、という構成になっています。

6 スルーシャの渡しとそん後すべて

さて、先ほどの続きです。あ、ちなみにスルーシャってのは川のことです。笑)ザッカリーは、メロニムの所有物をあさっていました。彼女をスパイと疑っているのでね。で、銀の卵を見つけます。その卵を触っていると、ユーレイ少女が出てきます。なんのこっちゃ・・・。この銀の卵はオリゾン、と呼ばれるもので、液晶画面みたいな?スクリーンみたいな?でなんか映像が見られるものなんです。このあたりで、「ソンミ〜451のオリゾン」とのつながりを思わせます。ネタバレしますが、「ソンミ〜451のオリゾン」で、クローンのソンミが記録官から色々取り調べを受けていた時に、彼女はオリゾンに向かって話してたんですよね。なので、オリゾンを通して、ソンミの話している様子を超近未来のハワイでも見られる、ということになっています。

ある時、ザッカリーの妹キャトキンが病気で死にかけますが、メロニムが助けてくれたんですね。あれ?スパイのはずだが・・・。ザッカリーは、もしかしてメロニムはいいやつなんじゃないかって思えてきたり、混乱しちゃんですね。

その後、メロニムは「マウナ・ケア」という山に登る!と言い出します。彼女はこのハワイの地を調査しているっぽいので、山も登っとかねば!って感じなんでしょう。でも、危ない場所だからやめとけ!って周りからは反対されるんです。で、ザッカリーがついていくことになります。あれだけメロニムを怪しんでいたザッカリーですが、妹を助けてもらったということで恩義を感じていたんでしょうか。

読み進めていきますと、このハワイ、あの「ソンミ〜451」が生きていた時代から、何百年後(!)経っていることが判明します。超近未来ということがわかりましたね。ソンミの時代でさえ、結構な未来のはずですからね・・・。そっから何百年後て・・・。

ザッカリーは、山登り中、オールド・ジョージーというおそらく悪魔的な存在だと思うのですが、そいつにそそのかされて、メロニムを殺そうとします。が、正気に戻りなんとか殺さずにすみました。で、ザッカリーはコナ人にとらわれてしまいますが、メロニムが助けに来てくれます。コナ人に追いかけられながらもメロニムと逃げ切るところまでが描かれます。

最後の最後には、ザッカリーの息子が出てきて、「パパの話はこんなだった」みたいなことを誰かに語りかけているシーンで終わりです。ザッカリー自身はもう亡くなっているようです。また、ザッカリーの息子はオリゾンを通してソンミの話を時々見るのですが、古語だから理解はできない、としています。そして、じゃあお前らにも見せるよ、とオリゾンを起動させて、そのままソンミの話につながっていきます。

この話は結構、謎多き話でした。結局メロニムは何者だったのか?シューエンとは?なぜ原始時代のような世界があるのか?先見人とは?・・・謎が多すぎる。文法も言葉も崩壊しているため、ザッカリーの語る物語は非常に読み取りづらい。これもまたわかりにくい理由の一つだ。解説によると、ザッカリーの世界は「弱肉強食」の世界らしいです。

5 ソンミ〜451のオリゾン

みなさん、さっきまでのあらすじ、覚えてまっか?!

ソンミはヘイ=ジューという男と行動を共にしているんでしたね?彼は組合マンと呼ばれています。彼に連れられ、魂を入れる手術を受けたソンミ・・・。完全たる人間にさせようってことでしょうか?なんでもヘイ=ジューの所属している組合は、ソンミのような上昇ファブリカント(意思を持っているクローン)を助けることにより、下層の人間を殺すというテロ計画を立てているようでした。クローンであっても、ソンミのように優秀なものであれば、魂を入れる手術を行って人間にすることができる。そんな優秀な元クローン人間の方が、下層の人間よりもいい!ってことでしょうか。

その後、ソンミは尼僧院にたどり着き、そこで尼僧院長と出会います。(ニソーインチョウ!!!)ここでの会話はあまりメモらなかったので覚えてません。笑)尼僧院を後にします。

で、ソンミはある恐ろしい事実を知ることになるんです。ファブリカントのサーバーたちは、12年間の労働の後、「歓喜」と呼ばれるハワイの天国へ行ける、と信じられていたのでしたね?しかし、それは建前。本当は、労働を終えたファブリカントたちは屠殺場で殺され、殺された時に出てくる様々な液体などをリサイクルして、そしてまた新たなファブリカントたちが製造されている、というカラクリだったのです!!!ファブリカントは、クローンといえども、見た目も人間と同じだし、自由意志はなくても、話すこともできる、いわば人間のような存在なのです。幾ら何でも、屠殺はひどすぎる!!!ソンミは絶望します。

また、その事実を知った記録官も呆然とします。文明国家でそんな暴挙が行われていたとは・・・!その際にソンミが言った言葉が印象的だったので引用しておきます。

始まりには無知があります。無知は恐怖を生みます。恐怖は憎しみを生み、憎しみは暴力を生みます。暴力はまた暴力を増殖させ、最後に残る法律は、もっとも力を持つ者が望むものだけになるのです。(131)

また、ソンミはこんなのおかしい!とヘイ=ジューに訴えかけます。この世界はおかしい!変えるべきだ!と。しかし・・・結局彼女ひとりの力ではどうすることもできず、彼女は逮捕され、今は処刑されるのを待っています。また、一部はそもそも芝居だったとかいう話も出てくるんですが、ここら辺はややこしくて理解が追いついてないので今は書けません。(苦笑)最後に、記録官に、人生で幸せだった時に見た映画を最後まで見たい、と頼んだソンミ。そう、その映画とは・・・。

4 ティモシー・キャヴェンディッシュのおぞましき試練

さて、前半のあらすじはかなり雑でしたね。前半の最後の方で、ティモシーはオーロラハウスっていう精神病院みたいな老人ホームに入れられていたんでしたね。老人ホームと言えばそうなんですが、鍵はかけられて出られなくされてるし、看護婦や院長などは独裁者みたいな人物。ティモシーを狂人扱いしますし、ま、もはや精神病院的ですよね。『カッコーの巣の上で』を彷彿とさせる世界です。

ティモシーはなんとかここからの脱出を図ろうとします。彼にはデニームという兄がいたんです。もともと、ティモシーはこの兄のせいでここに入れられてしまったんですよ。なんとか義妹(兄嫁)に電話をすることに成功し(普段は電話も禁じられています)助けを求めるティモシー。そこで兄は死んでいることを知ります!義妹に必死で助けを求めるのですが、どうやら義妹はちょっと頭がおかしくなってしまっているようで、話が全然通じません。ティモシー、脱出の夢は儚く散りました。

その後、オーロラハウスにいる、アーニーとヴェロニカという夫妻と親しくなったティモシーは、二人の協力で脱出できるかもしれない!となります。すったもんだありましたが、なんとか車で最終的には、逃げ切ることに成功!すったもんだの部分は、ぜひ小説を読んでみてくだされ。笑)老人ホームはゾッとするようなディストピアな世界でしたが、最後にはティモシー、逃げ切って自由を得ることができてよかったですね。ただ、この老人ホームは一体何を象徴していたんだろう?そこまでは読み解けませんでした。

3 半減期 – ルイーザ・レイ最初の事件

さて、お次はルイーザですよ!前半では、暗殺者により、車ごと海に突き落とされてしまったんでしたね?絶体絶命のルイーザでしたが、鬼のようなジャーナリスト精神でなんとか脱出!しかも、シックススミス暗殺などの事件の真相を暴くために必要な書類もなんとか救出!普通なら命が大事だから、諦めるものですが・・・。ルイーザのジャーナリスト魂ですね。

ジョー・ネピエという人物が、ルイーザの元を訪れ、この件からは身を引け、と助言してきます。ルイーザは死んだことになってますが、いずれ、彼女が生きていることが暗殺者たちに知られたら、またしても彼女は消されることになるでしょうから。

その後、サスペンス小説らしく、とにかくややこしい描写の数々!登場人物も多いし、いろんな人が亡くなるし、陰謀絡みでもうてんやわんや!レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』を読んだ時にも感じたんだけど、私はちょっと事件ものは苦手なんですよね。ややこしいし、なんか、もうさっさと解決してくれ!って思っちゃう。忍耐強く読み続けるのがきつい・・・。推理小説や事件もの、嫌いなんだ!!!

なので、ざっくり飛ばしまくりますよ。色々あって、追われて、逃げて、殺されかけて、ネピエさんに助けられて・・・。ルイーザは生き延びた!シックススミスの姪、メーガンにも会うことができ、事件の陰謀を暴くために必要な報告書を手に入れたルイーザは、全事件の真相を暴きました!彼女の記事が大々的に報道され、事件は解決!ルイーザはジャーナリストとして大成功!

彼女を助けてくれたネピエは、暗殺者のビル・スモークとの撃ち合いで死亡。悲しい最後ではあったけど、ルイーザとしては、シックススミスさんの不名誉な死についても真相を暴けたし、まあ、良かったんじゃないかな。そして、彼女はシックススミスさん宛てにきていた「ゼデルゲムの手紙」を手に入れたのです!

2 ゼデルゲムからの手紙

手紙の続きです。

さて、フロビシャーのその後ですよね。作曲家エアーズとの関係は崩壊しました。不倫もバレていたんです。その後、なぜかエアーズの娘エヴァといい感じになります。エヴァにいい感じに言い寄られたんですよ。謎ですね。エアーズ氏の妻とは不倫するし、今度は娘?理解できんわ。エアーズは脅してきますし、フロビシャーは城には居られなくなり、脱出しました。

で、実はエヴァが好きなのは別の男だったということが判明。フロビシャーが勝手に勘違いしただけだったんです・・・。その相手の男に襲いかかり、怪我をさせてしまったフロビシャー。しかも相手は権力のある人物の息子という最悪な事態!フロビシャーがこの街から消えるのであれば、なんとか許してもらえる、という話になったのですが・・・。

フロビシャーは結局、自殺を決意してしまうのです。いや・・・。なんで・・・?絶望したのかもしれないが、でも自殺することないだろう!で、実は、フロビシャーはバイセクシュアルっぽいですね。シックススミスさんに対しても、友人以上の愛情を抱いているような描写があったし。というか、もはや恋人だったのかな。じゃあ、なぜクロメリンク夫人やエヴァと関係を持とうとしたのでしょうか?不可解ですわ・・・。この物語が一番、意味不明だったかも。誰か教えてくれー。

1 アダム・ユーイングの太平洋航海誌

やっと戻ってきました!

寄生虫による病気で苦しんでいるアダムさんでしたね?

アダムさん自身は人権主義者ですよ。ただ、彼の周りには差別主義者、白人至上主義者などがうじゃうじゃです。白人至上主義の胸糞悪い話も出てきますよ。

ある日ですね、船の中でのことですが、ラファエルという若い水夫が、なんか困っている風でアダムに相談してきたことがあったんです。でもアダムはたいして深刻には受け取らなかったんです。ですが、その翌日ラファエルが自殺してしまったんです。なんと、ラファエルは、ボアハーヴ氏という船員を中心にレイプされていたそうなんです・・・。おぞましい・・・。航海なんかしたことないので知りませんが、正直、こういうのってめちゃくちゃ起こりそうな話だなーって思ってしまいました。絶対、一人や二人はボアハーヴ氏のような粗野で下卑た奴はいます!下品な冗談、まあ要は性的で下品な冗談を言ってくるやつとかね。刑務所っぽいですよね、若干。閉ざされた空間だし、若い水夫なんかは狙われてしまうだろうな・・・。最悪。ラファエルは毎晩襲われたらしく、苦しんで自殺。しかも、ボアハーヴは罰されない。悪夢ですよね。アダムは、ラファエルを救えなかったことを死ぬほど後悔します。

さてさて、恐ろしい真実。駆虫剤を飲んでいたアダムですが、実はヘンリー・グース医師はアダムを救うどころか殺そうとしていたことが判明したんです!一体なぜ!?グース医師はもともと歯を集めていたりと、悪趣味なやつだったので、アダムも最初は警戒していたんです。でもいつの間にか仲良くなったし、言っても医師だし信頼もしていたんですよね。ただやっぱりサイコパスでした・・・。しかも目当ては金。金のためだけに、患者を殺そうとするって、やばいっしょ。寄生虫というのも嘘だったらしいです。すんでのところで命を落とすところだったアダム、あのモリオリ族のオートゥアが助けてくれました!陸地に上がった後、瀕死のアダムを担いで、オートゥアは医者へ連れて行ってくれまして、アダムは生きながらえました。

この数奇なドラマを経験したアダムは、奴隷解放者になることを決意して、物語は終わります。

そして・・・。

みなさん、私がこの本を読もうと思ったきっかけはある一節を読みたかったから、と最初に書きましたね?実は、この一節、読めど読めど出てこないんです!嘘だろ!なんで出てこないんだ!?もしかしてもう読んでしまったのか?でも、気づかないはずがない!まさか、あの一節は映画版のみなのか?いや、そんなはずは・・・。最後の1ページに来ても、その一節は来ない!絶望しかけたその時・・・!

なんと、まさか!最後の最後の最後の文章が!その一節だったんです!!!!!そんなーーーー!!!絶対中盤あたりで出てくると思ってたのが、まさか最後の最後に来るなんてーーーー!!!嬉しいような、びっくりするような・・・。鳥肌ものでした。

さて、その一節を満を持してご紹介します。引用は長いですが、一節は最後の部分です。

アダムが、義父に、奴隷解放者になる!という決意を伝えた時のことです。括弧内は義父の言葉で、それに対するアダムの答えが最後の一文です。

「あーあ、いいだろう、ホイッグ党的な考えだな、アダム。だが、正義について私に言うのはやめてくれ!テネシーまでロバに乗っていって、田舎者の白人たちにお前たちは白く塗られたニグロで、奴らのニグロは黒く塗られた白人だと言ってやれ!旧世界に船出して、帝国の奴隷たちの権利はベルギーの女王のものと同じく、不可侵のものだと言ってやれ!ああ、集会でしゃがれ声になり、貧しくなり、白髪になるだろう!唾を吐かれ、銃で撃たれ、リンチされ、勲章でなだめられ、未開の男たちに足蹴にされるだろう!十字架にかけられるだろう!世の中を知らない、夢見るアダムよ。多頭のヒドラという人間の性と戦う者は、計り知れぬ痛みという報いを受け、家族もともに苦しむことになる!息を引き取る間際になって、わかるだろう、お前の人生は限りない海のたったの一滴でしかないのだということを!」

だが、どんな海も数知れない一滴からなるのでないのか?(353-354)


さて、この長大な小説を振り返ってしまいました。はー。疲れた!まじで疲れました!みなさん、意味はわかりましたでしょうか?全編読みきった私でさえ、はてな部分が多いのに、あらすじだけで意味がわかる、とはなかなか難しいと思います。一体なんの話なんだ!?って感じですよね?

正直、私が思ってた展開とは違っていたんです。私は、最初にあらすじとかを読んだ時に、時代や国の違う人々が、生まれ変わりながら生きていく話、っていう印象を持ってたんですね。輪廻、を描いたものだと思ってて。だから、アダムはフロビシャーになり、フロビシャーはルイーザになり、ルイーザはキャヴェンディッシュになり、キャヴェンディッシュはソンミになり、ソンミはメロニムになる!っていうね。で、アダムの時にはできなかったことを、何度もなんども生まれ変わることで、メロニムの時代でようやくできるようになった!みたいな、そんな感じを予想してたんです。だとすれば輪廻の意味もよくわかるっていうか・・・。でも、別に全面的に「生まれ変わりです!生まれ変わって前世で果たせなかったことを、現世で果たそうとしています!」っていう感じでもなかったんですよね。上に書いた人物、それぞれが「彗星の痣」を持っているので、それが生まれ変わり、を思わせる描写になっています。かといって、それぞれの人物に共通点があるとは言えないし、アダムのやろうとしたことをメロニムが受け継いでいる、とは言い難いような。うーん。難しいな・・・。作者の意図ってなんだったんだろう?

あるいは、そんな深読みするんじゃなくて、単純に、6つの別々の時代の物語をそれぞれ楽しめばいいだけのことかもしれない。いや、でもやっぱそうじゃないよね?だってもしそうならば、短編集でいいはずでしょ?これを一つの小説にしたことに、ミッチェルはなんらかの意味をつけているはずなんだよ!でも、私の頭では理解できない深さがそこにはある!!!

私は、もっと全ての物語、一見バラバラに見える物語が、最後にぴったりとはまって、それこそ全身鳥肌になるような、劇的な結末を期待してたんです。だから、期待が高すぎたなーっていうのが正直なところです。今までかなりの数の文学を読んできましたので、正直な話、期待が常にすっごく高くなってしまっています。鳥肌が立つ読書体験がしたいんですよねー。面白かったのは確かだし、こんなに夢中で小説を読んだのは久しぶりです!上・下巻とかなり長いのですが、先が気になって、どうしても本を置けなかったです。疲れるけど、でも先を読みたい!みたいな。そういう体験はなかなかできないから、その点では素晴らしかった。その分、結末がもっと、なんかこう、深遠な感じが欲しかった!

なので、思うにですが、内容云々よりも、形式なのかもですね?『ユリシーズ』的な?『ユリシーズ』は内容よりも、やはりあの書き方とかスタイルが斬新で飛び抜けているということで評価されていると思います。本作もそっち系かもしれんよね。6つの物語をつないでいくという構成、前半でそれぞれの途中まで読ませて、後半で回収していくという作り。こんなのは読んだことないしね。初めての試みなんじゃないかしら。そういう、形式的な、技術的な面でのすごさなのかもね?

でも、最後の一節が読めただけでも満足ですね。そもそも、あれが読みたいがために選んだし。まさか最後の一行とは思いもよらなかったけど!

訳者あとがきに、あるアンケートによる、それぞれの物語の人気順が載ってました。

1ソンミ、2ゼデルゲム、3ティモシー、4スルーシャ、5、6(同率)アダム&ルイーザ

嘘でしょ!!!!信じられないんだけど!!!世間と私の感覚のあまりの乖離にビビらざるを得ない。

ちなみに、私の「面白かった順」です。

1アダム!2ソンミ!3スルーシャ!4ティモシー!5ルイーザ!6ゼデルゲム!

世間との差よ!一番信じられないのは、アダムが最下位ってことと、ゼデルゲムが2位ってこと!アダム、あんないい話なのに!?なんで!?あと、ゼデルゲム、全然面白くなかったし!!!あんなイカれた作曲家の不倫、不道徳な話になぜこんな人気が?

にしても、アダムの不人気にはたまげるなー。アダムの話、一番、分かりやすいと思うし、モリオリ族の話とか奴隷制とか黒人差別・白人至上主義とか性暴行とか・・・めっちゃ社会問題含んでるし、アダムが最後に奴隷解放者になるっていう流れなんか最高だと思ったけど・・・。一番希望に溢れているエンディングだったしね?もちろん、最悪なことはたくさん起きたけど、アダムはオートゥアに助けられ、奴隷解放者になるって決意して、しかもあの素晴らしいセリフよ?!世間の者ども!ちゃんと読んでるのか?!

さて、振り返っていくと、6つの物語は全然違うようでいて、やっぱり全編を通して、奴隷と支配者、という弱肉強食のテーマは一貫していますよね?

アダムでは、モリオリ族や、黒人たちが奴隷。マオリ族は支配者、でもさらにその上に白人という構図。ゼデルゲムでは・・・。ここだけやっぱ違うよね?ここには特に奴隷と支配者とまで言える関係性は見当たらない。強いていうならフロビシャーの才能を食い物にするエアーズが支配者で、フロビシャーが奴隷か?ルイーザでは・・・。あれ、これもちゃうな。強いて言えば、大企業は一科学者や一ジャーナリストなんかあっという間に消せるっていうことで、それが弱者と強者の関係かな。ティモシーでは、老人ホームが支配者、ティモシーは奴隷みたいになるから、ここでもそのテーマは流れてる。ソンミは非常に分かりやすい。ファブリカントは奴隷、企業政(と呼ばれる組織)が支配者、最後のスルーシャでは、ザッカリーのいる原始世界が奴隷で、先見人の世界が支配者?ってことでいいかな?間違ってたらすんません。

ほら!ゼデルゲムだけ、ちょっとハミってるよ!ゼデルゲムが人気順2位ってどういうことやねん!

まあ、いいですけどね。人それぞれですし。

本作は映画版があるので、それも見てみたいです。かなり複雑な話なので、映像で見た方がしっくりきて、理解しやすいかもですしね。かなり映画的な小説だとも思いました。ソンミなんか、完全に映画化されるよなって思ったし。

あと!作者のミッチェルは8年間、広島に英語教師として住んでいたらしいです!ワオ!これもまた、私が本作を読もうと思った理由の一つでした。8年も広島に!著名な作家としては、珍しい経歴ですよね。あと日本人女性と結婚しているらしいです。日本にもきっと詳しいんじゃないかな?8年もいれば。この一作だけで、ミッチェルの大ファン!とまでは言えなかったですが、今後も機会があれば、彼の作品を読んでみたいなーとは思います。ちょっとSF的な要素が強く、難解すぎるのが玉に瑕かなーって。最後にもっと回収してほしかったな!っていうのもあって・・・。でもなんどもいうように、どっちかっていうと、内容の深遠さを求めるよりも、ただただ純粋に楽しむための小説かもしれないです。

また、今回は初めて読んだこともあって、純粋に順番通りに読みましたが、今度は6つの物語をそれぞれ分けて読みたいな、と思いました。例えば、私のいちばんのお気に入りのアダム・ユーイングの話は、最初に途中まで読んで、そっから別の話が9つも間に入ってしまうので、流れで読めなかったのが非常に惜しい気がした。やっぱ流れで最初から最後まで読んだ方が絶対わかりやすいし、内容も入ってくるはず!全編読み通すのは結構きついけど、アダム・ユーイングの話だけでも、せめて通しで読みたいなーって思いました。そういう面白さもありますね!

他にはない、ユニークな小説であることは間違いない!いろんな小説を読んできて、もう普通のじゃ満足できない!っていう文学通にオススメの作品だと思います。

原題:Cloud Atlas
出版:2004

クラウド・アトラス by デイヴィッド・ミッチェル” への2件のフィードバック

  1. About Cloud Atlas, You did a good job. On a point of data. Yuna was excecuted becaise she disobeyed the rules that the fabricants existed at. She was also being abused by their supervisor and that is probably why she was “awakened” because she experienced and saw things that were only supposed to be available to True Humans (people conceived in the normal way). They also had to wear the collars to distinguish them from the humans and to be able to immediately punish them!
    There were a clan of humans that were opposed to the cloning business and they freed Somni to save her. I cannot remember what it was that sparked her brilliance, perhaps it was sabotage during the cloning stage. She was freed for a reason and the reason was the broadcast that told the truth about clone oppression and Governmental corruption.
    Somni became a cult figure and a kind of god because of the prophetic vision that she had and the irony of the story is that the servers never went to paradise but they went back to a processing plant to become protein for the soap (protein mix) that the servers consumed in place of food.
    Cloud Atlas is a wonderful story to me, and I came across your blog when I was looking for a Japanese transation to give to my friend. Thanks for breaking down the synopsis of the book in this way!

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    1. Thank you for your kind comments and very sorry for my late reply!
      Wow, it’s great to know that you love and know fully about this complicated novel. This novel is definitely one of the most complicated and difficult books I’ve ever read. By the way, The Pacific Journal of Adam Ewing is my favourite. I love the plot which Adam Ewing experiences a bizarre sea voyage and finally decides to become an abolitionist. I thought what a beautiful ending. And also I like the story of Sonmi. This one seems to me a sci-fi and very movie-like story. I feel that these fabricants are somewhat like us, who are controlled or manipulated by governments or anything which has power, authority or money. Hope my Japanese blog is helpful for you and your friend:) Please come back again to my blog whenever you have free time!

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